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事の発端

やっぱり、ちゃんと形に残るようにくさしておかないとなぁ。ということで、半年ぶりに書いています。というか、その間、リアルが忙しかったということが理由で書いていなかっただけです。今回のような着火点があれば、きちんと言葉を遺す次第です。挨拶はこれくらいにして、本題に入りましょう。今回も政府の無茶振りについてです。以前もこんな記事書いてましたね。その時も、官邸から携帯電話料金が家庭に占める率が高いという御達しがあって、総務省らしい堂々巡りをしていたのでした。

大前提として

日本は、移動体通信事業において国有企業はありません。また、統制経済を敷いているわけでもありません。資本主義経済の中で自由競争をすることが基本です。ただ、移動体通信の基礎である電波資源の管理は、国が行っています。また、企業と個人の関係を対等にする役割も国にはあります。言い換えると、インフラは国の意向が関わるよ、販売は「自由が理想」だけれど現状は……。ということです。

日本は携帯電話創成期から、大衆に開放されていました。電話はインフラですから、官主導で普及策が取られました。NTTが利益独占を狙えたわけですが、資本主義経済らしく多数の企業群による新規参入と規制緩和によって、市場活性化が図られたわけです。しかし、つい数日まではその殆どを総務省が担っていました。そこに、ようやく消費者庁と公正取引委員会が加わり始めた次第です。他の業界に例えると、塾や教材は文部科学省の担当領域であるから、消費者庁にいくら苦情が来ようが文部科学省が対応を決める状態のようなものです。もちろん、ベネッセ一強になろうが公正取引委員会は声を出さない状態です。もし、仮にそのような状態にあったとしたら皆さんどう思いますか。少なくとも、私は「仕事しろよ。お前たちはなんの目的を持つんだ。」という言葉ぐらいは出すと思います。すくなくとも、携帯電話市場に対する省庁の対応をみて、不思議に感じていました。もちろん、規制に関わること、例えば、いついつから新しい電波使えるようにするだとか、今ある規格を使うときに悪影響が出ないか公正に判断し調整をするだとか、こういったことは電波行政の基本ですからすすんで行うべきと思います。しかし、消費者保護は消費者庁が、市場取引の監視は公正取引委員会がそれぞれ主導するべきです。しかし、それは政権交代しようがつい最近まで歪んだままであり、ごく最近になって治り始まった段階です。

総務省が描く地図と市場のあるべき姿

前段で確認したとおり、総務省とその関係者の意思が現市場には色濃く反映されています。現時点では、セグリケーションを行い、すべての選択肢を消費者が選べるようにするというものです。そして官製市場として、現在の状態が出来上がりました。自由競争ではなく官製市場です。ここで、いち消費者の皆さんに考えていただきたいのは、収入にかかわらず最新高級機極上サービスが使える世界と収入によってサービスが別れている世界です。皆さんが望むのは言うまでもなく前者です。だからこそ、大手3社はカネをバラマキ、消費者に道を示していたわけです。いわゆる、「カツゼロ、○万円CB、2円回線」ですね。もちろんこの全てを満たすにはそれ相応の工夫がいります。当たり前です。売る側も商人です。神様や仏様ではありません。儲けを出すことが頭の4割を出すための消費者目線なのですから。なので、対価として、セールを探す労力、条件を理解する知力を要求していたわけです。当たり前ですよね。いいものを買おうとしたら必然にかかるものです。一昨年、それが不公平感という抽象的な言葉とともに壊されました。今まで、普通の人が届く距離にあったものが、更に遠くなってしまったのです。なんせ一年や二年で新しい取引方法が浸透しませんから、官製市場と入っても「売れる」旧来の手法は残っています。

それでも、公には止めましたから各社収益のバランスは改善しています。今まで、端末販売は赤字が当然だったものが黒字になり始めているのです。それでも、皆さんの支払う料金がドラマチックに変わったわけではないはずです。それはなぜか、先程の3条件が一般消費者にとって常識ではなかったからなんです。そう常識ではなかったんです。何度も言いますよ。売る方も馬鹿ではないんです。安くできるけれど、それはきちんとした計算なり勉強なりがあるわけです。車を買うときに、販売店を周り、最安値を引き出すようなものです。日用品は買う機会が多すぎて、そんなことはやってられませんが、不動産や自動車といった契約の機会が少ないものでは当たり前のことです。これが、消費者にとってケータイだけ例外だったのです。不思議ですね。おそらくこれが全ての問題の根源です。なんせ、すべての人が最安値で購入する世界ならとっくの昔に、商売は成り立たなくなりますからね。大きな条件がつくはずです。

その問題の根源を無視していた総務省は、端末価格によって値引き額の許容度を変えることで、変化を促そうとしました。事実としてそれは消費者の利益になることはないのに。本当なら、家庭科で学ぶような消費者教育を見直しつつ、消費者保護のため消費者庁が行政監査を入れ、過当競争もしくは寡占にならないように公正取引委員会が監視をするべきです。そこで、不当な行動があれば行政として対応をすればいい、立法に提案し議論すればいいはずです。それが、詳しくないと自ら名乗ってしまうような有識者を呼び内輪の会議をし、そこだけで行政の名の下のお触れを出し、国民を従える。あれ、モリカケや文部省の汚職に似た構図ですね。その性根を直さない限りどうにもならないことは明白です。

最大の疑問

今回の発端の発言は、官邸の発言意図を歪められた一昨年のことを思い出し、今度こそと発破をかけたのだろう。選挙対策だろうという見方が強いです。しかし、そのために、エビデンスも出さず4割という数字を出す。このことはいかがなものかと言わざるをえないです。あなたが着ているその服、それが買った当時の半額に何もせずになると思いますか?その先には、何人もの人間が関わっているのに。せめて、そこに嘘っぱちでもいいから、○○依存のように一応の試算でもあれば検討の余地があります。しかし、現状その発言にはそのような物があるとは思えません。それだけでも飲み屋のおっさんの与太話と同等のレベルなのに、それを政府高官が公で話すという意味を理解していないと言わざるをえません。むかし、麻生さんがナチスという言葉尻を捉えられて糾弾されました。それと同じことです。あの文章はまだ前後文脈まで読み込むと、まだ常識ある文章だからいいのですが、今回の発言はそのようなこともないのでさらに救いようがありません。言葉でメシを喰う人間としては、最悪のレベルだと言えます。

「4割」の根拠はOECD平均でした

菅官房長官が、午前の定例会見で「4割」の根拠はOECD平均との差であると明かしました。その会見では、総務省と公正取引委員会の取り組みも紹介され、不透明感も解消していくとの発言もありました。以下に、私のツイートを載せますので気になる人はそこから確認をお願いします。

6分頃からケータイ業界向け問答が二分半ほど
平成30年8月27日(月)午前 | 平成30年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ https://t.co/MQPw2vX6j1

— wkwkrnht (@wkwkrnht) [2018年8月27日](https://twitter.com/wkwkrnht/status/1033916045927440384?ref_src=twsrc%5Etfw)

また、テレビニュースの選り抜きとなりますが、事の発端の発言の一部が見つかりましたので紹介します。

http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000134505.html

https://www.fnn.jp/posts/00399150CX

OECD平均とは

話を戻して、今日の発言を検証しましょう。そもそも、OECD平均が何を表すのかというところから書いていきたいと思います。OECDは先進国間の協力により経済発展、貿易自由化、途上国支援を実現していく機関です。現加盟国は、経済産業省によると以下のとおりです。 > イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、スロベニア、ラトビア、日本、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国、チリ、イスラエル 主だったところでは、中露、インド、ブラジル、サウジアラビア、南アフリカがいないことですね。今回話題になっている携帯電話において、中国がいるかどうかは大きなポイントです。

そのOECDでは、経済発展も掲げていることから関連統計も公表しています。その中に、電気通信事業つまりインターネット接続と電話の企業に関するものもあります。その中に、Pricesがあり、mobile broadband basketがあります。それが菅官房長官が話題にした統計と思われます。この統計はMNOを抽出しているので、いわゆる格安スマホが登場するとしたらサブブランドのY!mobileだけですね。また、利用量によって以下のように区分されています。

OECDによるユースケースの区分
名前 通話量[回] 通信量[B]
100 500M
300 1G
900 2G

まず、ギガが足らないですよね。あと、通話回数は今の日本において問題ではありません。というより、時間単位での課金なのでなぜ回数なのかという感じですね。というわけで、この前提条件は、日本の消費者を想定していないと言えるでしょう。というよりもスマートフォン後進国向けですね。スマートフォン先進国、動画や画像などのリッチコンテンツが中心の国においては細かいプラン訳でないと対応できなくなっています。それは、日本からはauのプランが抽出されていますがどの区分でも同じ料金プランであることからも伺えます。この時点でも、人によっては回れ右をしてもいいと思いますが、一応数値だけは載せておこうと思います。いずれも合計金額です。ちなみに日本のプランは、10分通話定額と3GBデータ定額に定期契約ありのプランです。

国名 金額[USD]
日本 63.7999056
OECD平均 19.818
国名 金額[USD]
日本 66.2261796
OECD平均 25.695
国名 金額[USD]
日本 69.7942296
OECD平均 31.459

中だけ金額違いますがそれは不明です。本来ならすべて一緒だと思うのですが。実際に、平均の2倍あることは確かなのですが、チリもいればスロバキアもいるノルウェーもいる中でこれが正しい値かどうかは疑問符が付きます。加盟国の中には、日本より2世代遅れた規格、通信速度で言えば10の何乗というレベルで違うものを運用しており、田舎ではそれが当たり前という国もありますし。去年5月時点のものなので、変化している可能性は否定できませんが。

ここからは独自比較

では、実際のところどうなのかという比較をARPU、1ユーザーあたりの平均収入でしたいと思います。今回は日本の他に、オーストラリア、韓国、シンガポール、香港も載せていきます。2018年第1四半期もしくは2017年通期決算資料をベースとします。

日本
キャリア名 ARPU[JPY]
NTT docomo 4390
au 5840
SofyBank 4320
オーストラリア
キャリア名 ARPU[AUD]
VHA 36.24
Optus 42
Telstra 65.41
韓国
キャリア名 ARPU[KRW]
SKT 32290
KT 32993
LGU+ 32721
シンガポール
キャリア名 ARPU[SGD]
Singtel 46
StarHub 45
Mobile One 41.7
香港
キャリア名 ARPU[HKD]
Three 188
CMHK 不明
CSL 195
Smartone 262

まあauはARPAで固定なりなんなりが数えられている可能性もあるので、1000円ほどのマージンがあるとみるのがいいでしょうか。CMHKは中国の国有企業、中国移動の子会社なのでたぶん非公開なのかなと思います。

以下に、執筆時点のみずほ銀行における両替レートを載せておきますので参考にしてください。

通貨名 レート[JPY]
AUD 91.11
KRW 0.1148
SGD 86.34
HKD 16.60

4割、そのからくりとは?

菅官房長官の口からOECD平均と楽天が公表している計画から件の発言が出たという本人の「言い訳」を紹介しているものです。そこで、OECDのデータからそのものと思われるデータも紹介させていただきました。もし、これが出典そのものだとすると、タイトルの通りになります。以下、カラクリを書いていきます。また、これが出典そのものかどうかを確かめる問い合わせを議員事務所に送ったのですが、1週間以上返信がなく多分夢だったのだろうと思うのでこれは半分与太話だと思って読んでください。

キーワードは「ピタット」

そうです。多段階制定額プランであるauピタットプランが2017年07月14日に導入されました。もちろん、件のデータは、○GBデータパックのようなものを対象にしていると思われる上に、導入日がデータの発表時期と被ってしまったことから対象外となっています。しかし、ユーザーである国民には関係のないことです。申し込みができ、目玉でもあるのだから考慮に入れないわけにはいきません。そこで、これの料金は通信量が、1GBまでが3480円、2GBまでが4480円です。条件としては、カケホSと定期契約のみでOECDの調査と変わりません。

ここで、データの方に戻りましょう。カケホSにデータ定額3で定期契約ということで、6696円です。LTEフラットよりはたしかに安いです。そこでここに0.6を掛けてみましょう。それが官房長官の望む金額であると思われますから。そうすると、4017.6円です。端数は切り捨てでない限りは、切り上げ処理になってしまうので、公平に4018円としましょう。そうすると、OECDが想定するシチュエーションが3つあるうち2つで、下回ります。これは、高利用者が通信を2GB/月という想定なので、それ以外はピタットプランの最低額となるためです。その高利用者でさえもターゲット金額の+462円ですから誤差といってもいいぐらいです。少なくとも高すぎるとは言えない状況ではあることが言えます。

大手メディアはなぜ取り上げないんでしょうかねー(棒)

この記事の投稿日には、沖縄知事選の自公推薦者が官房長官といっしょにこの件を訴えるということを宣伝されていましたが、地元の名士企業、沖縄セルラーは鼻で笑っているでしょうね。いやいや私らすでに還元してますからって。しかも、MNO三社は1GB利用時の金額は合わせにいってますから、いずれにおいても達成されているわけです。それ以上は、戦略なので多少の違いがあったように思いますけれども。

さて、菅官房長官が、公の場で民間企業である各社に、具体的な数値とともに「忖度」を促したこの事件です。いつもなら政府批判を繰り広げるであろう朝日系、共産系あたりは騒がしくないように見えます。もしかしたら記事を書いているんかもしれませんが、少なくとも私の知るところではありません。ただし、きちんと検証すれば、論理が破綻しており加計学園を追求するよりよほど容易く否定できてしまいます、共産系にとっては、政府が民間に口をだすことは、主義主張からして当然のことなので追求しないのでしょうが、いつものメディア様はもったいないことしてるなぁと思いながら過ごしていました。冒頭でも挙げた通り、データの裏取りが取れていなかったので書くのを先延ばしにしていたのですが、返事が来ないので書いてしまいました。これがどこかに転載されてでも、燃え上がることを期待しながら筆を置かせていただきます。お付き合いいただきありがとうございました。