
いつもどおりアキバをぶらついていたら、衝撃の特価が目に入った。それを告知するツイートがこれだ。
EMBEDLY https://x.com/PK_akibahonten/status/1789919224095179152
出会いは突然に
パソコン工房の一部店舗にて、SPARKLE製のIntel Arc A310搭載ITXサイズグラボが、1万円程度になった。ローエンドグラボが1万というのも、RX570祭りを思えば高いように感じるが、近頃の相場からすれば十分な特価なのだ。実際に、当該製品のチャートをみると、市場最低価格から6千円引きとなる。おおよその割引率換算だと6/16*100=32.5%であり、並大抵の小売施策で引き出せる割引ではないことがわかる。もちろん、隣にあるASUSのHDMI強火モデルも十分な特価ではあるのだが、多画面☆マニア以外には刺さり難い上、割引率からするとA310のほうが一歩上回る印象だ。
さらに、DDR4 DIMM16GBのキットが4千円弱という特価が同一期間で行われたことも記録しておきたい。まだその値が続くと信じ、マザボを買うまで決断を先延ばしたために、私自身は逃したのだが。
購入理由
というわけで、偶然発見した特価に引き込まれ、処々の情報を確かめたうえに購入してしまった。一般に、動作確認用グラボとして考えると、サポート期間の長短は読めないが、十分に効果を発揮しそうだ。
私の場合は、もとより仮想化基盤を含めた検証用途で、純Intel機を求めていたこともあり、かねてからIntel Arcの購入を検討していた。Linuxに対するドライバーズサポートの手厚さを考えると、純Intel環境は相当に魅力がある。もちろん、現在稼働している純AMD機を下ろすことも選択肢に上がる。しかし、Polarisのサポートが収束方向であることを踏まえれば、近年中に公開を迫られる可能性が高い。よって、知見を広げるためにも純Intel機を志向していた。
先に、仮想化基盤を含めた、という説明をした。近頃、こうした発表があったことも追い風になる。何かしらの形で、ホスト用Windowsさえ用意してしまえば、素直な形で無制限の検証環境が揃うということだ。具体的に何をするということは決めていないが、日常生活で見つけていければいいと思っている。
他に、OBS周りの検証も行いたいと考えている。現状では、Polarisを用いた4K録画・配信はできていない。さらに、AV1ハードウェアエンコードも環境がない。そういった状況から、トレンドに近いエンコードをできないことに不満を抱えていた。特に4K録画不可ということは、個人用途の録画においても、メインモニターが4K故に致命的な支障となる。Intel Arc自体が不安定ということは前提にあるが、エンコード性能については一定評価を得ており、この用途に限り利益を見込んでいる。
配信環境を槍玉に上げた理由は、将来的にこの機器を導入しようと目論んでいる。いわゆるビデオスイッチャーではあるのだが、USBの系統が、UACのみとUVC+UACの2つ用意されている上、電源がUSB PDであることが特徴だ。要はLEWTIT CONNECT 6のように、コンソールゲーム機とPCのボイスルーティングを期待できる。ビデオスイッチャーであると同時に、UVCへのエンコーダーも搭載するので、各コンピューターの負荷を減らし、4K配信を現実的に狙える。私が行ったうち直近の配信を見ればわかるが、APEX LEGENDSのように、現世代機への最適化が遅れたタイトルの場合、PS5の配信機能を用いながら長時間プレイすることは困難である。こうしたところも改善したいと考えている。
想定構成
以上で、A310の想定用途と購入理由を書いてきた。しかし、手持ちのIntel環境はモバイルノートしか存在しないため、一式購入する必要がある。再び特価グラボから始まる自作構成となった。そこで、現状販売されているパーツをもとに考案したのが次のとおりになる。
品番 | 価格 | |
---|---|---|
CPU | Core i5 13400F | 30480 |
MB | PRO B760-P WiFi DDR4/TW | 16980 |
RAM | KD48GU880-32N220D | 4620 |
SSD | SSD-CK480S/J | 4880 |
電源 | FD-P-IA2G-550 | 8980 |
ケース | SST-PS13B | 5909 |
小計 | 71489 | |
GPU | SA310E-4G | 10980 |
総計 | 82829 |
RAMとSSDと電源は稼働要件を満たす中で、最安となるものを選択した。特にRAMは、純AMD機がDDR5移行するならば、自動的にクルーシャルブランドのDDR4-3200 32GBキットが浮くので、当座のものを選択したことになる。電源も、9千円戦後ならば80PLUS Gold認定のプラグイン電源が容量問わず出てくるため、その時々で良好な条件をつかみやすい予算感として適当である。しかし、SSDはSATAポートをHDDに使うために、M.2形状を選択する可能性がある。さらに、マザボの都合上、M.2形状はNVMe接続に限定されるため、特価品が存在することを祈るばかりだ。
ケースの選択理由
ケースについては、現在流通するもののうち、5.25インチオープンベイが多いものを選択した。その理由は、ディスクドライブなどのI/Oポートを増設する可能性が高いためである。現在の主流では少なくなりつつあるが、固定機こそ拡張性を重視する派閥としては、オープンベイが多いほど嬉しいものだ。
容積の小ささについては、ポジティブに考えれば取り回しの良さにつながる。タワー型PCを複数台運用する都合上、今後の部屋がどれだけの容積を保つことができるかも考えなければいけない。そのバランスをとると、意外に悪くないサイズと考えられる。今回の構成では、補助電源不要グラボを採用することもあり、排熱容量に気を使わずに住むことも大きい。
また、次期純AMD機に採用されるGPU次第とはなるが、AMD機がこのケースを使い、Intel機がCM694を使う可能性も存在する。用途の都合上、Intel機のストレージ要求値が高くなりやすいため、その可能性も捨てきれないといったところだ。CM694は最大14機を収容可能であり、OSごとにSSDを分け、共有ストレージとしてHDDを多量に積む場合でも対応可能なのだ。そのCM694は、日本国内の流通在庫が途切れており、先述した5.25インチオープンベイに対する逆風を踏まえれば、COMPUTEXで新製品がなければ、終売だろう。であれば、今回取り回し重視でミドルタワーケースを選択し、用途に応じて切り替えることが適当と判断した。
ちなみに、2Uケースを除外した理由は、ファンの小径化による騒音問題が大きい。その上、現居住地における重量物設置の評価をしていないため、重厚な設備を要するものをむやみに置けないことも一因となる。
マザボの採用理由
近年マザボメーカー選びに苦労する傾向がある。日本国内の業務を行う人物が、その職務に係るアカウントで無関係の人物を無差別ブロックする事案や、サポート窓口によって対応が変わる事案など、安定して付き合いができるメーカーはどこか、見極めが難しい。日本国内の事情を抜きにした場合においても、ほとんどのマザボは、メーカーのガイドラインに強く縛られるため、Function(≠Spec)の差がない。AsrockのLiveMixierシリーズやASUSのProArtシリーズのようなクリエイター向け、AsrockのAQUAシリーズのような水冷向けぐらいなものだ。そんな中、今回選択したMSIのB760下位シリーズは、非常に特徴的なFunctionが存在する。
近年、特にゲーミングを謡う上位製品は、PCIEスロットを削減する傾向にある。厳密にいえば、M.2スロットという形で実装しているため、M.2登場以前に比べて極端に減少したわけではない。それでも、PCIEスロットという形では、16レーン形状2つ、1レーン形状1つが標準と考えられるだろう。世代やブランドによっては、それぞれ前後することもある。
しかし、今回のように、複数のNIC、配信向けI/O、RAIDカードの搭載が考えられるケースでは、16レーン形状のスロットが多量に求められる。一般的にどの拡張カードも、4レーン以上の形状を要求するため、近年の標準構成では枯渇する可能性がある。グラボが2スロット厚のため、ワークステーションのような使い方が難しいとしても、同時利用できるスロットを稼ぐ必要がある。この状況下において、今回の製品は適合するのだ。
PRO B760-P WiFi DDR4/TWは、PRO B760-P WiFi DDR4の代理店限定モデルとなる。近年では各GPUのDay0配信でおなじみとなった、想定売価を満たす「特別モデル」のような存在なのだろう。メーカーPCでは昔から販路限定SKUを設けることにより、売価を抑えることに成功したことを踏まえれば、消費者として歓迎できる動きではある。改めて商品画像を確認すると、16レーン形状のスロットが5つある。ロック機構が存在するスロットのみ4レーン以上、それ以外は1レーンだが、先ほどの要件を表面上は満たすモデルとなる。
現Intelプラットフォームにおける廉価ラインとしては、I/Oの多さで右に出る者はいないモデルとなる。H770がASUSへの限定供給となったこともあり、これ以上PCIEスロットが増えたモデルが流通することも考えづらい。マイニング用に多スロットモデルが一時流通したが、ATXの範囲外となる上に現在では絶滅危惧種なので、事実上このモデル一択なのではないだろうか。
まとめ
今回遭遇した特価と、今後予定するPC更新計画を紹介した。このインフレ傾向の中では、意外に安く済む構成ではないだろうか。マザボの特価は大きな原動力となることを、強く思い知らされる情勢である。前回と比べれば、「中央値が」倍になっている具合なので仕方ないところである。それでも、OS込み10万円弱を狙うことができることはありがたい。夏のボーナスなどを工面しながら組み上げたい。